外来

糖尿病外来 Diabetes outpatient

新たな2型糖尿病治療への取組み

近年、米国を中心に、2型糖尿病は心不全や腎不全と同じく、生命を維持するために必要な臓器(膵臓)の機能不全であり、その機能不全が徐々に進行する、「進行性β細胞不全」として捉えられるようになってきました。従って、その治療に於いては、単に、血糖のコントロールのみではなく、進行性β細胞不全(生涯、進行してゆくβ細胞機能の低下とβ細胞量の減少)の進行を阻止、あるいは抑制することが非常に重要となります。当院では、2型糖尿病を「進行性β細胞不全」として捉え、その進行抑制のための新たな2型糖尿病治療(進行性β細胞不全を標的とした2型糖尿病治療)に取り組んでいます。

1. 健康寿命を守るために

糖尿病は従来、代謝内分泌疾患として扱われ、その専門外来は糖尿病専門医が担当してきました。しかし、近年、2型糖尿病患者さんの生命予後、健康寿命、生活の質を守るためには、糖尿病による大血管障害(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、下肢の動脈閉塞などの心血管病)の予防が極めて重要なことが明らかになってきました。従って、現在、2型糖尿病の治療の主眼は大血管障害(心血管病)の予防に移ってきています。当院では、糖尿病を「全身の血管閉塞病」として捉え、循環器専門医が大血管障害(心血管病、動脈硬化性疾患)の発病、進展予防を目的とした総合的な糖尿病診療を行っています。

2. 大切な膵β細胞を守るために

高血糖を放置しますと、糖尿病患者さんの膵β細胞機能(膵臓のインスリンを出す力)は進行性に低下してゆくことが最近、分かってきました。もともと、日本人の膵臓のインスリンを出す力は欧米人に比較して弱く、日本人では過食、肥満、運動不足などの、わずかな膵臓への負担でも、糖尿病が発症、進行します。従来の糖尿病治療では、SU薬(ダオニール、オイグルコン、アマリール、グリミクロン)が主に使用されてきましたが、SU薬は膵β細胞への負担をさらに強めることが懸念されおり、最近は出来るだけ膵β細胞への負担を減らし、膵β細胞を保護する治療法(つまり、膵臓を馬にたとえますと、力の弱い馬をさらに鞭打つのではなく、馬の荷物を減らし、大事に使ってあげる治療法)の重要性が認識されてきています。当外来では、SU薬の使用量を出来るだけ減らし、より緩やかな薬で膵β細胞を保護し、膵臓に優しい治療(β細胞保護療法)を行っています。

3. 生涯インスリン治療を回避するために

当院では、血糖コントロールが不良となった2型糖尿病患者さんを対象に、1~2週間の入院による短期インスリン療法(4~10日間のみのインスリン治療)を行っています。この治療法は糖尿病が重症化し、経口糖尿病薬が効かなくなった患者さんにも、早い時期に行えば有効であり、又、早い時期に行うほど、入院期間は短くてすみます。一回の入院により、その後、約90%の患者さんで、飲み薬のみで、下の図のように長期に渡り、良好な血糖コントロールが可能となります(第49回 日本糖尿病学会総会で発表)。血糖コントロール不良のため、医師よりインスリン治療を勧められたことのある患者さんは是非、早目に御相談ください。

進行性β細胞不全を標的とした2型糖尿病治療

2型糖尿病は従来、代謝内分泌疾患として治療され、その治療の目標は高血糖を是正することにより、糖尿病合併症の発症を防ぐことでした。しかし近年、食事運動療法や、SU薬などの経口糖尿病治療薬、さらにはインスリンを使って血糖を正常化しようとしても、時間とともに血糖のコントロール(血糖の正常化)が段々困難となることが分かってきました。これは、インスリンを分泌するβ細胞の機能と量が、進行性に徐々に低下してゆくためと考えられています。

そこで、近年、米国を中心に、2型糖尿病は心不全や腎不全と同じく、生命を維持するために必要な臓器(すい臓)の機能不全であり、その機能不全が徐々に進行してゆく、「進行性β細胞不全」として捉えられるようになってきました。従って、その治療においては、単に、血糖のコントロールのみではなく、進行性β細胞不全(生涯、進行してゆくβ細胞機能の低下とβ細胞量の減少)の進行を阻止、あるいは抑制することが非常に重要となります。そうしなければ、最初は食事運動療法で血糖のコントロールが可能であったとしても、時間とともに、コントロールが段々と困難となってゆき、経口糖尿病治療薬の服用や、さらにはインスリン注射を行っても、良好な血糖コントロールは困難となってゆきます。

では、2型糖尿病の自然経過の中で生じる、進行性β細胞不全(進行性β細胞機能の低下とβ細胞量の減少)を、阻止あるいは抑制することは可能でしょうか?

その自然経過を変え得る有効な治療法として、短期強化インスリン療法が国内外の医療施設より報告され、現在、注目されています。しかし、この治療法はインスリン持続皮下注入または基礎インスリン補充も行うインスリン4回注射による、厳密な血糖コントロールが必要とされており、その煩雑さのため、国内医療施設では十分には普及していません。私どもの病院では、基礎インスリン補充を行わない速効型インスリン食前3回注射による簡易治療法を用いた短期強化インスリン療法を行っており、その有用性を既に、糖尿病学術専門誌に報告致しました(糖尿病51:309-317,2008、Diabetes Frontier 23:355-363,2012)。また、医学雑誌「日経メディカル」2010年10月号のトレンドビュー、2014年3月号の特集でも、私どもの病院の治療法が紹介されています。

この治療法は、従来のインスリン治療が体内で不足したインスリンを注射で補う、ホルモン補充療法であるのに対し、病気の早期にインスリン治療を短期間(1~2週間)のみ行い、糖毒性を解除することにより、糖毒性による進行性β細胞不全を防ごうとするものです。進行性β細胞不全(進行性のβ細胞機能の低下とβ細胞量の減少)は、高血糖(特に食後高血糖)を放置することによる糖毒性のために生じ、その糖毒性の原因として、酸化ストレスと小胞体ストレスというβ細胞内の二つのストレス(過負荷状態)が重要と考えられています。この二つのβ細胞内ストレスを軽減しようとする治療が 早期の短期強化インスリン療法とβ細胞減負荷療法の併用治療です。

私どもの病院では、コントロール不良となった2型糖尿病患者さんに対して、1~2週間の入院による短期強化インスリン療法を行い、糖毒性を解除した後、外来でβ細胞減負荷療法(β細胞の過負荷を取り除き、β細胞を保護することを主眼とした治療法)を継続することにより、長期にわたり、良好な血糖コントロールを維持することを目指して、治療を行っています。

この治療法は、肥満でない痩せ型の2型糖尿病患者さんで成功率が高く(約80%)、また、短期間(平均7日)で糖毒性を解除できることが多く、良い適応となります。さらに、初めて糖尿病治療を受ける初回治療の患者さんでは、短期強化インスリン療法後にβ細胞減負荷療法(穏やかな薬により、β細胞に懸かっている過剰な負荷を減らす治療)を継続することで、良好な血糖コントロールが得られることが多く、最も良い適応となります。これは、初回治療の患者さんではβ細胞量が余り減っていないためです。

一方、コントロール不良の状態が10年以上続いた患者さんや、高容量のSU薬を5年以上服用していた患者さんは、この治療の成功率は明らかに低くなり、また、成功しても、その後の良好な血糖コントロールの維持も困難となることが多いのです。これは、この治療を開始する前に、β細胞量が既に、かなり減ってしまっているためと考えられます。

従って、コントロール不良となった2型糖尿病患者さんでは、高容量のSU薬を服用し続け、その間にβ細胞量を減少させてしまうよりも、できるだけ早期に短期強化インスリン療法を受け、入院による薬物治療(短期強化インスリン療法)と教育入院による生活習慣の修正を同時に行い、退院後に外来でβ細胞減負荷療法を続けることにより、進行性β細胞不全の進行を抑えることが期待できます。

非可逆的β細胞不全(β細胞量の著減)が進行してしまえば、生涯のインスリン治療が必要となり、さらに、たとえ1日4回のインスリン注射(強化インスリン療法)をおこなっても、良好な血糖コントロールを長期に維持することは極めて困難となります。つまり、正常なβ細胞の緻密な働きを、インスリン注射で代用することは困難なことなのです。従って、体の中で唯一、インスリンホルモンを作ることのできるβ細胞を守ることが、血糖コントロールを長期間、良好に保つために、最も重要なこととなります。

そのためには、2型糖尿病を進行性疾患(放置すれば確実に進行してゆく疾患)として捉え、できるだけ早期より治療を始めること(特に、食後高血糖の改善と生活習慣の修正)が必要であり、もしも、コントロール不良となれば、糖毒性によるβ細胞量の減少を防ぐため、できるだけ早期に短期強化インスリン療法を受けることが勧められます。

糖尿病治療学術講演会

学術誌・医学雑誌

学術誌「糖尿病」 2008年4月号

短期強化インスリン療法とβ細胞保護療法を
併用した2型糖尿病治療の有用性
岩城 正輝 石丸 勝雄 中屋 豊

Diabetes Frontier 2012年6月号

2型糖尿病における簡易プロトコールを用いた
短期強化インスリン療法の有用性
岩城 正輝 由宇 教浩 江藤 和子 中屋 豊

日経メディカル 2010年10月号

ごく短期だけ強化インスリン
糖毒性の解除で長期の血糖管理が容易に

日経メディカル 2014年3月号

進行性β細胞不全を食い止める
膵島負荷を軽減する3つの治療法

短期インスリン療法のおすすめ

血糖がうまくコントロールできていない糖尿病患者さんでは、高血糖のため、膵臓からのインスリン(血糖を下げるホルモン)の分泌や、身体でのインスリンの働きが悪くなります。これを糖毒性が生じるといいます。この状態をそのままにすると、患者さんは高血糖のために更に高血糖がひどくなるという、糖毒性の悪循環に陥り、糖尿病は悪化して行きます。そして、膵臓のβ細胞(インスリンを分泌する細胞)は疲れ切り、ついには、β細胞の数は極端に減り、血糖を下げるために必要なインスリンの分泌が出来なくなります。そうなりますと、不足するインスリンを注射で補う治療(インスリン治療)が生涯必要になります。

生涯のインスリン治療を避けるためには、高血糖をそのまま放置せず、出来るだけ早く、適切な治療を受けることが必要です そのためには、早い時期に短期インスリン療法 を受けることが最も有効で確実な、最新の治療法です。

当院では1~2週間の入院による短期インスリン療法を行っています。
入院中に

  1. 4~10日間のインスリン注射治療(膵臓を休ませて、その働きを回復させる)
  2. 糖尿病合併症の検査(動脈硬化、心臓、腎臓、目、足などの合併症の検査)
  3. 糖尿病についてのビデオ学習、食事指導、服薬指導

を行い、インスリン分泌力の回復を確認した後、経口薬に変更し、退院となります。

対象となる方

  • 初診時すでに血糖のコントロールが悪い(HbA1c 8.4%以上)
  • あるいは経口薬を服用中なのにコントロールが悪い(HbA1c 8.4%以上)

といった症状の患者さんです。
糖尿病治療で最も重要なことは、糖毒性の悪循環を絶つことにより、生涯にわたって、膵臓のβ細胞が弱るのを防ぎ、インスリン分泌を行っている大切なβ細胞を守ることです(β細胞保護療法) 。
治療を希望される方、短期インスリン療法について詳しく知りたい方は、毎週月曜日午後に糖尿病外来(予約制)を行っていますので、ご来院ください。予約は内科外来または電話で行っています。尚、受診時は食後血糖を調べますので、朝食、昼食は済ませて来院してください。

糖尿病ケアチームのご紹介

徳島県は糖尿病による死亡率が高く、人口100万人に対する死亡率は17.6人と全国平均の11.0人を大きく上回り、6年連続で全国ワースト1位となっています。
徳島県民の1日の歩数は全国平均に比べ、男女共に1,000歩以上少ないという調査結果が出ています。これは、徳島県では車に依存した生活となりやすく、歩く機会が少ないことが原因と考えられ、糖尿病死亡率を押し上げる一因になっています。

現在、当院でも多くの糖尿病患者さんが来院されています。2008年4月より糖尿病外来が当院に開設されました。糖尿病外来通院により、生活習慣や食習慣の改善、内服薬の調整等を行った結果、血糖コントロールが良好になった患者さんがたくさんいらっしゃいます。良好な血糖コントロールを維持することで、糖尿病による合併症(糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害)も予防・改善が可能となります。

2008年11月に糖尿病ケアチームも発足しました。メンバーは、医師・糖尿病療養指導士・看護師・管理栄養士・理学療法士・薬剤師で構成されています。患者さんにより良い糖尿病のケアや治療内容について話し合っています。年1回のウォークラリー、年2回の糖尿病教室もケアチームメンバーで話し合いをして、楽しく糖尿病を学べる場を提供できるように、企画・運営しています。

さらに、糖尿病の合併症である足病変の予防や早期発見のため、フットケア外来を2009年1月から開始しました。糖尿病患者さんの54%は足に何らかの自覚症状を感じており、58%の方は足の外観異常に気付いているとの調査結果もあります。足について気になる方は、お気軽にご相談下さい。